一石観音三尊立像 石造薬師如来立像|吉井町のローカル感あふれるエリアに鎮座する高崎市指定文化財
高崎の中心部から車を走らせること約20分。
吉井町の烏川沿いに、石造りの三尊仏と薬師如来像がひっそりと佇んでいるのをご存知でしょうか?
その名称は一石観音三尊立像 石造薬師如来立像。どちらも高崎市指定の文化財です。
穏やかな天気に誘われて、その姿を拝観してきました。
一石観音三尊立像 石造薬師如来立像までの道のり
事前調査では少々ニッチな雰囲気を醸し出していた今回の目的地。グーグルマップにも掲載されているので、迷わずたどり着くことができました。
近くには利根川水系の一級河川烏川が流れ、畑に囲まれたロケーション。知る人ぞ知るB級史跡スポットと言えそうです。
実はこの場所、以前は古墳だったそうで、この辺りが甘楽郡とされていた当時の地名から取った、岩平村4号古墳(通称:薬師塚古墳)の墳頂付近に、一石観音三尊立像と石造薬師如来立像はあります。
高崎市吉井町はこんな史跡でも有名になりました。
一石観音三尊立像について
一石観音三尊立像(「一石観音菩薩三尊立像」とも呼ばれる)は、南北朝時代、古墳の奥壁に刻まれたものが現在まで残されており、かれこれ600年以上の歴史を持つ貴重な史料でもあります。
凝灰岩を彫って造られていますが、だいぶ風化が進んでいます。
平成元年から2年にかけて、像の修復作業と覆屋(仏様を安置する建物)の設置が行われたそうです。
1枚の大きな岩に3体の像が鎮座しています。中央の主尊は、頭に宝冠を乗せ左手に花瓶を持つ観音菩薩立像。宝冠の形はくっきり残っていました。像高75センチ、像幅25センチ程。
そして主尊の両脇に安置されているのが、仏の衆生教化を助ける存在の「脇侍(わきじ)」。
右側の愛染(あいぜん)明王像は武具を身につけていますが、像の損傷により細かいところまでは見えません。
主尊の左側は不動明王像。右目を見開き、右手に剣を持つ力強い脇侍ですが、こちらも剣の部分はうっすらとしか見えません。
石造薬師如来立像について
三尊立像の隣に並立するのが石造薬師如来立像。右肩から左脇腹にかけて斜めに斬られた「切り裂き」があることで、俗に袈裟切(けさぎり)薬師と呼ばれる薬師如来様です。室町時代の作で、 一石観音三尊立像と同じく凝灰岩を彫って造られています。
パンチパーマのような螺髪になで肩、そしてやや丸みを帯びた体つきは、病気を治癒する仏様として知られる薬師如来様のおおらかな姿を表しているようでした。
像高は64センチ、像幅21センチ程と、三尊立像の主尊と比べるとやや小ぶりです。
一石観音三尊立像と石造薬師如来立像の御利益
©http://www.city.takasaki.gunma.jp/
今回ご紹介した4体の神様の主な御利益を調べてみました。
愛染明王:良縁・結婚成就・夫婦円満・無病息災・延命・水商売守護など
不動明王:除災招福・戦勝・悪魔退散・国家安泰など
薬師如来:病気治癒(目の病気も)・健康長寿・災難除去、安産祈願など
仏様の前で心を穏やかにして一心にお祈りする。そんな昔の人々の姿が眼前に浮かんでくるようでした。
一石観音三尊立像 石造薬師如来立像 詳細情報
※番地はなし
電話:027-321-1292(高崎市役所文化財保護課)
駐車場:あり(無料・1〜2台)
アクセス:
車 上信越自動車道吉井ICより約15分
電車 上信電鉄吉井駅より徒歩約40分
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まとめ
南北朝時代・室町時代に造られたとされる一石観音三尊立像と石造薬師如来立像。古墳の墳丘に祀られ、風化した今でもなお周囲の自然と調和して佇むその姿を見て、どんな時も高い所から人々を見守っているように感じました。
観光名所というよりはお参りのためのスポットですが、緑豊かな吉井町で歴史に思いを馳せることができる場所です。あなたも密かなお願い事をしに、足を運んでみてはいかがですか。
※情報は取材当時のものです