【FP監修】男性の「育休義務化」は必要?育休取得にまつわる助成金、支援制度について徹底解説!
共働き家庭が増え、男女ともに社会で活躍しながら子育てを両立していくための制度としての育児休業。
女性が取得する割合は高くなってきていますが、まだまだ男性の取得率は少ない状況です。
海外では女性だけでなく、男性も育休を取得するのが一般的といった国もありますが、日本ではなかなか男性にとって、育休を取りにくい状況が続いています。
今回の記事では、「男性の育休義務化」や育休制度について、また男性が育休を取得する上でのメリットやデメリットについて詳しく紹介します。
【この記事の監修】
年間100世帯の面談経験を元に、個人のコンサルティングやweb上での相談サービスに加え、お金の専門家として様々な情報サイトで執筆を手掛ける。
保険のみならず、年金や社会保険、資産運用や老後資金など幅広い知識で家計にベストなアドバイスを行うFPとして人気が高い。
FP2級・AFP 資格保有
男性の育休が義務化されるって本当?
今年の6月、自民党有志が「男性の育休義務化」を目指す議員連盟の設立総会を開きました。
育休義務化とは、男性の社員が子どもが生まれたら必ず育休を取得しないといけないというイメージを持ちがちですが、そうではなく、「本人が育休を言い出さなくても、会社側から個人へ育休を促すことを、会社側に義務付ける制度」のことをいいます。
この制度には賛否両論があり、「女性に義務付けられていない制度を、男性だけに義務付けるには無理がある」「人手不足で困っている中小企業には義務化への取り組みは難しい」などといった反対意見も出ています。
政府は仕事と育児の両立を支援するということで、育休取得を奨励する助成金などを中小企業向けに打ち出していますが、現状では育休義務化を「目指す」にとどまっています。
男性の育休取得率はたったの6.16%
政府は、令和2年までに男性の育休取得率を13%に上げるという目標を掲げていますが、厚生労働省の発表したデータによると、平成30年に発表された男性の育休取得率はたったの6.16%という結果でした。
※出典https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45681230U9A600C1EE8000/
(男性の育休取得率の計算は、育児休業取得者数を配偶者が出産した社員数で割った数字に100をかけたものになります。)
前年よりも1.02ポイント上昇しており年々増加傾向ではあるものの、女性に比べるとまだまだ取得率は低い状況です。
続いて、男性の育休取得日数にも目を向けてみましょう。
平成27年の雇用均等基本調査によると、男性の育休取得日数は「5日未満」が56.9%と突出しており、次いで「5日~1ヶ月未満」が26.2%、「1ヶ月以上」が16.7%とのこと。
※出典https://www.sankei.com/life/news/190624/lif1906240027-n1.html
男性の実際の育休取得日数は「5日未満」という短期間の割合が約6割を占めていて、「名ばかり育休」なんて揶揄も聞こえてくるほどです。
男性の育休取得率が低い3つの理由
では、なぜ男性の育休取得率はこんなにも低いのでしょうか?主な理由は3つあります。
- 収入が減ってしまう
育休中は会社から給料は支払われないものの、保障として国から育児休業給付金が支給されますが、やはり正規の給料に比べると少ない金額になります。
給付金はおよそ給料の約3分の2、さらに6ヵ月経過後は半分になるので、生活に不安を感じる人は多いですよね。
子供が産まれるとなおさらお金が必要になってくるもの。
収入が減るのを心配した奥さんが、男性の育児休暇に反対するというケースも多いようです。
- 「パタハラ問題」で明らかなように、社内の目は冷たい
「イクメン」という言葉がポピュラーになった今でも、会社によってはまだまだ男性が育休を取ることに対する冷ややかな視線があるようです。
会社を休むことにより同僚の負担も増えるので、職場によっては迷惑がられたり歓迎されないこともあります。
育休を取得した男性社員が、企業側から不当な扱いを受けるといった「パタニティ(父性)ハラスメント」が話題になっているように、まだまだ育休に対する社会の風当たりは強いのが現状です。
- 出世が厳しくなる
政府は男性の育休の取得を推進してはいるものの、企業では育休を取る男性社員はあまり信用できないとみなされる傾向があります。
「子どもの体調不良や行事などを優先してすぐ会社を休みそう」
「長期にわたる重要なプロジェクトには参加させられない」
というイメージを持たれ、出世コースから外されてしまう可能性も否定できません。
育休を取って育児に専念したい気持ちはあっても、将来のキャリアに影響すると思うと、なかなか一歩を踏み出せないパパたちも多いようです。
男性の育休にはどんなメリットがあるの?
男性の育休取得率が低い理由をお伝えしましたが、実はメリットもたくさんあります。
- 子どもと多くの時間を過ごすことができる
なんと行っても育休のメリットは、子どもと過ごす時間を多く確保できることです。
朝早くから夜遅くまで仕事していると、こどもの寝顔しか見ることができないといったパパたちも多いですが、思い切って育休を使うことで、子供の日々の成長を間近に感じ取ることができます。
- 夫婦の仲が深まる
夫婦が一緒に子育てをすることで、夫婦の絆も深まります。
ママが背負う子育ての負担は相当なものです。
日々の家事に加えて、赤ちゃんの寝かしつけやおむつ交換などをママに変わってやってみるだけでも大変さがわかりますし、ママの気持ちも分かってあげられるようになります。
また、子供の教育や将来についても、夫婦でゆっくりと話し合う時間を持つことができ、教育費についての対策などについても育休の間にじっくりと行うことができます。
- マネジメント力が高まる
育休をとり、子育てに深くコミットしていくとそのタスクの多さに驚きます。
おむつ交換や授乳(ミルク)、入浴の介助から寝かしつけなど24時間体制で子どもに向き合う必要があります。
与えられた時間の中で、だんだんと効率的な育児を習得していきますし、子どもが成長していく上での叱り方や褒め方なども学んでいくことになります。
育児を通して、マネジメントスキルを磨くことができたと考えるビジネスパーソンは多いです。
男性の育児休業はいつから?取得できる期間は?
これまで男性の育休についてのメリットとデメリットを紹介しました。
では実際に男性の育休は、いつからどれくらいの期間取得することができるのかについて説明します。
育児休業の対象となる条件
「育児休業」とは「労働者が原則として1歳に満たない子を養育するためにする休業」のことで、育児・介護休業法という法律によって定められた制度です。
日々雇用でない労働者が対象となりますが、
- 入社1年未満の労働者
- 申出の日から1年以内に雇用期間が終了する労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
の方々については、労使協定により対象外となりえます。
また、アルバイト・パートなどの期間の定めのある有期契約労働者が育児休業の対象となるには
- 入社1年以上
- 子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと
という要件を満たす必要があります。
育児休業の取得期間
取得可能な期間は原則として出産日から1年間(こどもが1歳になる誕生日の前日まで)ですが、条件に応じて、次の2つのパターンが適用されます。
- 両親がともに育児休業を取得する場合には、子どもが1歳2ヶ月に達する日迄の期間(パパママ育休プラス)
- 子どもが1歳になる時点で両親どちらかが育児休業中であり、保育所に入所できない場合は1歳6ヶ月に達するまでの期間(1歳6ヶ月でも同様の状況の場合、最長で2歳になるまで取得可能)
育休を取得できる回数は原則として子ども1人につき1回ですが、様々な条件や特別な事情により例外的に取得することができます。
- 子の出生後8週間以内に、産後休業をしていない従業員が最初の育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても再度の取得が可能
また、下記のような特別な事情においても再度の育児休業の取得ができます。
- 配偶者が死亡、負傷、疾病等により子を養育することが困難となった場合
- 離婚等により配偶者が子と同居しなくなった場合
- 新たな産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始により育児休業が終了した場合で、当該育児休業に係る子が死亡した場合等
- 子が負傷、疾病、障害により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする場合
- 保育所等の利用を希望しているが、入所ができない場合
どれも厚生労働省の育児・介護休業法のあらましに詳しく載っているのでご自身の状況と照らし合わせながら、調べておきましょう。
男性も支援制度や給付金を利用できる
さらに男性も育休の支援制度や給付金の利用をすることができます。
うまく制度を使うと、金銭や時間のバックアップを受けてより安心した子育てをしていくことができます。
具体的には
- 育児休業給付金
- パパママ育休プラス
- パパ休暇
- 両立支援制度
といった制度があります。ひとつずつみていきましょう。
育児休業給付金
育児休業給付金は、育児休業を支援するために支払われる給付金のこと。
ハローワーク(公共職業安定所)に申請をします。
育児休業給付金の支給額は、受け取っていた給料によって変わってきます。
休業開始時賃金日額(i)×支給日数×67%(休業開始から6か月経過後は50%)
で計算します。
「休業開始時賃金日額」は、育児休業開始前の6ヶ月間の賃金合計額を180で割って算出したものです。
例えば直近6ヶ月の休業開始時賃金日額が月20万円だとすると
200,000 (円)×0.67=134,000(円)が1ヶ月あたりの育児休業給付金の金額です。
6ヶ月経過後は50%になるので、
200,000(円)×0.50=100,000(円)になります。
ただし、給付金の申請にはいくつか条件があります。
- 雇用保険に加入していること
(自営業や個人事業主、専業主婦(夫)の方は申請不可) - 育児休業前の2年間で、1ヶ月に11日以上働いた月が12カ月以上あること
- 育児休業期間中の1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 育児休業期間中は就業している日数が1ヶ月に10日を超え、かつ就業時間が80時間を超える場合は支給されません。
パパママ育休プラス
パパママ育休プラスとは、両親がともに育児休業制度を使う場合に
育児休業の対象となる子どもの年齢が、1歳2ヶ月まで延長される制度のことです。
パパママ育休プラスを使える条件は
①配偶者が子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
②本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
③本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日以降であること
となっています。
パパママ育休プラスを使うことで、ママの職場復帰後にパパが交代で育休をとって子育てをするなど、柔軟な対応ができるようになります。
パパ休暇
パパ休暇は、子どもが生まれた後父親が8週間以内に育児休業を取得した場合、特別な事情がなくとも再度育児休業を取得できる制度のことです。
出生後8週間以内に育児休暇を取得していてかつ8週間以内に育児休暇が終わっていることが要件になります。
両立支援制度
育児休業制度の他にも子育てと仕事、どちらも両立できるように様々な制度が設けられています。
両立支援として位置づけられている制度を、表にまとめました。
短時間勤務等の措置 | 子どもが3歳になるまで、希望すれば短時間勤務(1日原則6時間)の措置を義務付け |
子の看護休暇制度 | 就学前の子どもが1人であれば年5日、2人以上で年10日を限度として看護休暇の取得が可能 |
時間外労働の制限 | 就学前の子どもを持つ労働者の場合、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限 |
転勤についての配慮 | 転勤させる場合、育児の状況について配慮義務がある |
企業への対策 | 育児休業を取得したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止、育児休業等に関するハラスメントの防止措置を義務づけ |
育児についての制度をうまく活用することで、仕事との両立がしやすくなりますし、男性も子育てにさらに深くコミットできるようになるのではないでしょうか。
まとめ
近年、働き方改革や少子化対策の一環として、子育て支援にも目を向けられてきており、徐々にではありますが子育ての環境が整いつつあります。
男性の育休も、少しずつ今後当たり前になっていくはずです。
育休取得実績があり、育休取得推進をしていることが優れた会社の条件であるという時代もそう遠くありません。
男性が育休を取得し、子育てに積極的に関わることは、こどもにとっても夫婦にとってもたくさんのメリットがあります。
育休制度をよく理解してうまく活用していけるといいですね。
|