【FP監修】学資保険は離婚のとき解約する?注意点や手続き方法を解説
離婚の際、財産分与として夫婦で分けるものに学資保険も該当します。
財産分与の方法は解約して、その返戻金を折半したり、解約せずに離婚時の解約返戻金を算出して折半したりと、方法はさまざま。
解約して折半する方法だとトラブルは少ないのですが、元本割れして損をしてしまいます。
しかし、解約しないで保険を継続する場合には名義変更や保険料払込を誰がするかなど、離婚時に決めておくべき事が沢山あります。
本記事では離婚した時の学資保険の取扱について解説いたします。
【この記事の監修】
年間100世帯の面談経験を元に、個人のコンサルティングやweb上での相談サービスに加え、お金の専門家として様々な情報サイトで執筆を手掛ける。
保険のみならず、年金や社会保険、資産運用や老後資金など幅広い知識で家計にベストなアドバイスを行うFPとして人気が高い。
FP2級・AFP 資格保有
離婚したら学資保険は解約するべき?もめにくい財産分与の方法
家庭の事情により離婚してしまった場合に、夫婦の共有財産である学資保険を解約すべきか悩む人も多いのではないでしょうか。不要なトラブルを生まないためにも、学資保険をどのように扱うのかは離婚前にしっかりと相談しておくべきです。
今回は離婚時の学資保険の取扱いについて、どのような選択肢や注意点があるのかをお伝えします。できれば、公正証書なども利用し、双方が納得できる方法を目指しましょう。
学資保険を解約して解約返戻金を財産分与する
後からトラブルになる可能性が低く、もっともシンプルな選択肢は、離婚の際に学資保険を解約し、その解約返戻金相当額を財産分与しておくという方法です。
しかし、学資保険を途中解約してしまう事にはデメリットもあります。
・後から再契約を希望しても、契約者や被保険者の加入年齢には上限があり加入できない場合がある。
学資保険の解約の際には、その後学資保険に加入するのかどうかを先に検討しておくといいですね。現在の子どもの学資保険を継続したいという場合には、他の方法を考える必要があります。
解約しないで契約者を親権者に名義変更する
離婚の際に学資保険を解約する人は多いですが、解約せずに名義変更をして、学資保険を継続する選択肢を選ぶケースもあります。離婚協議や離婚調停でも、学資保険は子供のものということで親権者である母親に全額を譲る父親も多いです。
しかし、原則財産分与の対象となるので、折半になることも想定されます。その場合、離婚時の解約返戻金を保険会社に算出してもらい、相当分を分割して財産分与する人が多いです。
その際、その後の学資保険の保険料の支払いについて配偶者との事前の話し合いが必要不可欠です。名義変更をしたからといって、父親と母親がどちらか一人で支払うという決まりはありません。親権者が離婚後に生活が苦しくなり、保険料が払えなくなる可能性があります。保険料は誰が支払っていくのか、もしくは分担して支払うのかをしっかりと決めておきましょう。
お金に関する細かい取り決めには、慰謝料や養育費などと同様に学資保険についても公正証書で記載しておくと安心です。
公正証書とは、夫婦で財産分与などについて協議し、法律にもとづいて作成された公文書のことです。公正証書があれば、離婚後にトラブルになった場合でも証拠として確実な証明ができます。
解約しないし名義変更もしない
名義変更をしないまま、学資保険を継続する事も可能です。契約者が親権者の側であれば、特に問題なく契約を継続できます。
しかし、契約者が親権者でない場合は、そのまま契約を継続する事はおすすめしません。
なぜなら、支払いがされずに契約を失効するケースや、契約者が勝手に学資保険を解約する、満期金や祝金を勝手に使うなどのトラブルが起こりやすいからです。
どうしてもそのまま契約を続けたい事情があるなら、離婚時にしっかりと取り決めをしておく必要があります。
保険によっては名義変更できない場合も
学資保険のなかには、契約内容に払込免除特約がついていると名義変更ができない保険もあるので注意してください。
例えば、アフラックの学資保険では、「保険料払込免除特則を付加したご契約の場合、ご契約者の変更はお取り扱いしません」と明記されています。
契約者変更に関してのきまりは、各保険会社の約款に記載されていますので、確認してみてくださいね。
名義変更ができないとなると、学資保険を解約するか、どちらかが特別費用(毎月の養育費とは別に特別にかかる費用)として払い続けるしかありません。
継続する場合は、払込をするのが夫か妻のどちらにするのかを決めておくといいですね。
離婚時に学資保険を解約しないときの注意点
離婚時に学資保険を解約しない方法を取る際、後になって困る事のないよう、気を付けるポイントを説明します。
契約者と親権者は一緒にしておこう
離婚後に学資保険でトラブルが起こりやすいのは、契約者と親権者が異なるケースです。保険の契約に関する事柄は契約者一人の判断で決定できます。
- 勝手に解約される
- 祝金を勝手に使われる
- 保険料滞納で失効する
- 保険満期金を担保に借金される
- 税金の滞納で差し押さえになる
このような事態になっていても、親権者は契約者ではないため、気付くことができません。教育費や進学費用としてあてにしていたお金が知らぬ間になくなっていた……なんて事は避けたいですよね。
トラブルを避けるためには、親権者を契約者にしておくとよいでしょう。さらに、契約者の独断で好きに使われないように、公正証書を用意しておくと安心です。
公正証書は自分で用意もできますが、弁護士に依頼する事もできます。
その分費用は掛かりますが、面倒な手続きを任せられる事や、間違いのない公正証書を作成できるというメリットも大きいので、検討してみてくださいね。
契約者と受取人が違うと税金が起こる可能性が
契約者が受取人が異なる場合、保険金の受け取りの際に贈与税がかかる可能性があります。学資保険の契約者と、子どもを育てている親権者が別の人の場合に注意です。
<贈与税の計算方法>
税率と控除額は基礎控除後の課税価格によって決められています。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ― |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
<計算例>学資金300万円を受け取る場合
(300万円−基礎控除額110万円)× 10% = 19万円
契約者と受取人が異なると、300万円の学資金に対し19万円が贈与税として徴収されます。この税金は契約者と受取人が同一であれば払わずにすむ金額です。
子供の教育資金のための学資保険、少しでも多くの資金を手にするためにも、契約者と受取人は親権者にしておく事をおすすめします。
しかし、契約者と受取人を変更した場合は、その時点での解約返戻金が贈与とみなされます。契約者の変更時に贈与税の対象とはなりませんが、保険解約時や満期時に贈与の対象となります。
ですので、契約者変更時の解約返戻金が110万円を超えてなければ特に問題は生じませんが、払い込み満了や受け取りの満期が近く、解約返戻金が110万円を超えている場合の学資保険の契約者と受取人の変更には、契約者変更をしたがために税金が掛かってしまうので注意が必要です。その点も含めて離婚時の財産分与や契約者変更の条件の設定をされるとよいでしょう。
学資保険にまつわる税金についてはこちらの記事をチェックしてください学資保険の契約者名義変更の手続き方法
学資保険の名義人変更は、契約者側から保険会社に連絡をして手続きを進めていきます。各保険会社で手続きの流れ、必要書類が異なる場合がありますが、ソニー生命を例に契約変更の手順をご説明します。
<契約者の変更・ソニー生命>手順 | 作業者 | |
①連絡 | 保険の担当者または、カスタマーセンターに連絡をする | 契約者 |
②書類のお届け | 請求書類を担当者からもらうか、保険会社から発送する。 (ソニー生命では、担当者の情報端末での手続きも可能) | 保険会社 |
③書類のご提出 | 請求書類に必要事項を記入し、返送する。 その際に必要書類を同封する。 <返送する書類> ※公正書類とは | 契約者 |
④手続完了 | 保険会社が書類確認後に手続きが完了する。「手続完了のお知らせ」を送付する。 | 保険会社 |
離婚の際に必要な変更手続きは、契約名義の変更だけではありません。その他の手続きについても事前に把握し、対象となる手続きは変更し忘れないようにしましょう。
<離婚の際に変更する可能性のある手続き・ソニー生命>手続方法 | 必要書類 | |
住所 電話番号 変更 | ①WEBサービス ②担当者との手続き | なし |
氏名の変更 (改姓) | ①担当者との書面のやり取り ②電子請求書での手続き | なし※状況に応じて書類が必要になる場合もあります。 |
受取人変更 | ①担当者との書面のやり取り ②電子請求書での手続き | なし※状況に応じて書類が必要になる場合もあります。 |
振替口座の変更 | ①WEBサービス ②担当者との手続き | ②担当者との手続きの場合 ・ソニー生命から送付される請求書類 ・金融機関お届け印 |
払込方法の変更 | ①担当者との書面のやり取り ②電子請求書での手続き | なし※状況に応じて書類が必要になる場合もあります。 |
まとめ
離婚の際には、学資保険もきちんと財産分与しておく事が望ましいです。財産分与の方法はさまざまですが、トラブルの少ない方法を選びたいですね。
離婚時には名義変更などの手続きも多く、保険料は誰が支払うのかなど、決めておく事もたくさんあります。
手続きをせずにしておくと、契約がそのまま続いてしまうので注意です。後になってもめる事ないように、しっかりと話し合っておきましょう。
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