【FP監修】学資保険は確定申告を!保険料控除額の計算方法や申請方法を解説!
学資保険が所得控除の対象になることを知っていますか?
学資保険は毎月決まった額を支払っていくため、1年で割とまとまった出費になりますよね。
この保険金の支払い金額を申告することで、少しでも税金が安くなる可能性があるのです。
今回の記事では、学資保険料を確定申告や年末調整で申告する際の控除額の計算方法などを詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
【この記事の監修】
年間100世帯の面談経験を元に、個人のコンサルティングやweb上での相談サービスに加え、お金の専門家として様々な情報サイトで執筆を手掛ける。
保険のみならず、年金や社会保険、資産運用や老後資金など幅広い知識で家計にベストなアドバイスを行うFPとして人気が高い。
FP2級・AFP 資格保有
学資保険は所得控除の対象になる
学資保険は生命保険とみなされ、学資保険に加入して支払った保険料は所得控除である「生命保険料控除」の対象です。
生命保険料控除は、学資保険を含む生命保険や医療保険などに支払った保険料を確定申告や年末調整時に金額を申告することで、課税所得金額から一部を差しく事ができるので、所得税と住民税の支払い金額を抑えることができます。
生命保険料控除には以下の3種類があります。
控除名 | 対象 |
一般生命保険料 控除 | 生存または死亡などにより一定の保険金が支払われる保険契約の保険料 |
介護医療保険料 控除 | 疾病または身体の障害などにより保険金・給付金が支払われる保険契約の保険料 (※2011年12月以前の契約は一般生命保険料控除の対象) |
個人年金保険料 控除 | 個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約などの保険料 |
学資保険は上記3種類のうち、「一般生命保険料控除」に該当します。
控除対象に含まれるのは、確定申告する前年の1月1日から12月31日までに支払った保険料です。
ただし例外として、いわゆる貯蓄保険や貯蓄共済で保険期間が5年未満の契約は、保険料控除が受けられませんので注意しましょう。
【参考ページ】
国税庁ホームページ【生命保険料控除の対象となる保険契約等】
保険料控除を受ける際に注意するポイント
学資保険のために支払った保険料について控除を受けるには、契約のタイミングや保険期間などによっていくつか条件があります。
期待していた控除が受けられなかった、ということがないように、事前に確認しておきましょう。
すでに他の保険で控除を受けている場合は控除されない場合がある
生命保険料控除の制度では、支払った保険料の全額を控除できるわけでなく、上限が設定されています。
すでに学資保険以外の保険で上限額まで控除を受けている場合、学資保険分の保険料について控除を受けることはできません。
学資保険の名義人が妻の場合でも保険料控除を受けることができる
学資保険は、妻が専業主婦の場合でも夫の収入で保険料を支払うことができるため、妻の名義で契約することができます。
しかし、その場合そもそもの収入が0の専業主婦から保険料を差しいても節税はできません。
ただ、国税庁は、個人が保険料控除の対象にできる保険契約を
「保険金受取人が保険料の払い込みをする者 」、もしくは「保険金受取人が保険料の払い込みをする者の配偶者・その他の親族」が支払ったものと定めています。
つまり、専業主婦の奥様の名義で学資保険を契約していても、実際に保険料を支払うのが主人の場合は、「保険料の払込をする者(夫)の配偶者」に当てはまるので、その分を主人の保険料控除の対象にすることができます。
また、妻が専業主婦ではなく、パートなどに行っている場合でも年収が103万円以下で扶養内に入る場合は、主人の保険料控除として申告する方が良いでしょう。
保険金の受取人が第三者である場合は控除対象外となる
学資保険の保険料を控除するには契約形態の条件があり、保険金の受取人が以下のいずれかに該当する保険契約の支払い保険料に限定されます。
(1)契約者本人または配偶者
(2)そのほか6親等以内の血族
(3)そのほか3親等以内の姻族
保険金の受取人が親族以外の第三者の場合、生命保険料控除を受けることはできません。
例えば契約者および保険金受取人がどちらも妻の保険契約があり、夫が保険料を支払っていた場合は前述したように夫に保険料控除が適用されますが、仮に夫婦が離婚した場合、夫は親族ではなくなるため、保険料支払いの事実があっても生命保険料控除を適用できません。
控除適用限度額と計算方法
「平成22年度税制改正」によって、控除の方法が変更されました。
2012年1月1日以降に締結した保険契約は「新契約」、2011年12月31日以前に締結した契約は「旧契約」とされ、それぞれ控除額の計算方法が異なっています。
申告の際は区別する必要があるので、正確に把握しておきましょう。
新契約で受けられる控除額
2012年1月1日以降に締結した保険契約が新契約です。
新契約の場合、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類すべてが適用されます。
所得税の場合
所得税では各控除の適用限度額は最高40,000円で、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除をあわせて最高120,000円まで控除できます。
年間の 支払保険料 | 控除する金額・計算式 |
20,000円以下 | 支払った保険料全額 |
20,001円 ~40,000円 | (支払った保険料÷2)+10,000円 |
40,001円 ~80,000円 | (支払った保険料÷4)+20,000円 |
80,001円以上 | 一律40,000円 |
住民税の場合
住民税では各控除の適用限度額は最高28,000円で、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除をあわせて最高70,000円まで控除できます。
※28,000円×3=84,000円ではありません!
年間の 支払保険料 | 控除する金額・計算式 |
12,000円以下 | 支払った保険料全額 |
12,001円 ~32,000円 | (支払った保険料÷2)+6,000円 |
32,001円 ~56,000円 | (支払った保険料÷4)+14,000円 |
56,001円以上 | 一律40,000円 |
旧契約で受けられる控除額
2011年12月31日以前に締結した保険契約が旧契約です。
旧契約の場合、一般生命保険料控除・個人年金保険料控除の2種類のみ適用されます。
新契約とは違い、介護医療保険料控除は適用されません。
所得税の場合
所得税では各控除の適用限度額は最高50,000円で、一般生命保険料控除・個人年金保険料控除をあわせて最高100,000円まで控除できます
年間の 支払保険料 | 控除する金額・計算式 |
25,000円以下 | 支払った保険料全額 |
25,001円 ~50,000円 | (支払った保険料÷2)+12,500円 |
50,001円 ~100,000円 | (支払った保険料÷4)+25,000円 |
100,001円以上 | 一律40,000円 |
住民税の場合
住民税では各控除の適用限度額は最高35,000円で、一般生命保険料控除・個人年金保険料控除をあわせて最高70,000円まで控除できます。
年間の 支払保険料 | 控除する金額・計算式 |
15,000円以下 | 支払った保険料全額 |
15,001円 ~40,000円 | (支払った保険料÷2)+7,500円 |
40,001円 ~70,000円 | (支払った保険料÷4)+17,500円 |
70,001円以上 | 一律40,000円 |
生命保険料控除を受けるための必要書類や手続き方法は?
生命保険料控除を申告する方法は、申告者が自営業者か給与所得者かによって異なります。
ここでは確定申告および年末調整で申告する際の必要書類や手続きの方法について説明します。
自営業者の場合の申告方法
自営業者の人は、確定申告で生命保険料を申告します。
確定申告は、前年の1月1日~12月31日までの課税所得を書類にまとめ、税務署に申告する税務上の手続きです。
生命保険料控除については、確定申告書の第一表、第二表それぞれに記載する欄があります。
第一表には「所得から差し引かれる金額」欄の「生命保険料控除⑫」に生命保険料控除額を記載します。
また第二表には、「所得から差し引かれる金額に関する事項」欄の「⑫生命保険料控除」に控除額を記載します。
それぞれ、新契約と旧契約を分けて書く必要があったり、色々な保険会社から加入している場合の申告の漏れや、控除の上限金額を超えてしまわないように気を付けてください。
作成できたら、申告期間の2月16日~3月15日の間に税務署に提出しましょう。
サラリーマン(給与所得者)の場合の申告方法
会社員など給与所得者の人は、年末調整で所得控除を申請します。
年末調整とは、給与所得者の給与から源泉徴収されている所得税額について年末に再計算し、税金の過不足額を調整する手続きです。
生命保険料を控除した結果、源泉徴収されていた税金が多すぎる場合、還付金として戻ってくることになります。
年末調整では、控除額を「給与所得者の保険料等申請書兼配偶者特別控除申告書」に記載します。
申請書には、毎年10月ごろ加入している保険の保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」を添付しなければならないので注意しましょう。
また、うっかり年末調整で控除するのを忘れたという場合は、翌年の確定申告でも生命保険料控除の申告は可能ですので安心して下さい。
年末調整の申告書の詳しい書き方はこちら↓
学資保険が満期になったら税金がかかる?!
学資保険は、貯金のように教育資金を積み立て、満期になれば保険金を受け取ることができます。
では、満期で受け取った保険金には税金がかかるのでしょうか?
満期日にまとまった学資金を受け取った場合、「一時所得」となりますが、一時所得には50万円まで特別控除が設定されています。
税金を計算する時には特別控除額50万円が差し引かれるので、実際には支払った保険料と受け取った保険金の差額が50万円を超える場合のみ税金が課されます。
しかし、現在の一般的な学資保険では50万円お金が増える契約はあまりないため、実際に税金が課されることはほとんど考えられないでしょう。
ただし、契約者と保険金の受取人が違うケースや学資年金形式で受け取ったケースでなど、一部では贈与税などの税金がかかる場合があるので注意が必要です。
学資年金を受け取った場合は「雑所得」と見なされる
学資保険には、満期日にまとまった額を受けとるタイプのものと、大学4年間に渡って毎年学資金を受け取る「学資年金」タイプがあります。
先ほど説明した通り、満期金は一時所得として50万円の特別控除が適用されますが、学資年金の場合は「雑所得」となり、この場合は特別控除が適用されません。
契約者が会社員などの一般的な給与所得者の場合の所得税の計算では、給与所得と退職所得以外で受け取った所得は20万円まで申告不要となりますが、個人事業主の場合はすべての所得を確定申告で必ず申告が必要となるので、課税対象となります。
据え置きした場合の税金
学資保険の便利な制度の一つに、据え置き制度があります。
据え置きとは満期保険金や祝金を受け取らないまま保険会社に預けることです。
預けている期間は利息がつくため、満期後すぐにお金が必要でない場合にはお得な制度です。
ただし据え置き制度を利用した場合、税金の部分で少し注意が必要な点があります。
満期保険金や祝い金を受けった場合は一般的に所得税がかかります。
祝金が課税対象となるのは受け取った時なので、据え置き制度を使えば実際の受け取り時点まで課税タイミングを先送りできます。
一方満期金の場合は据え置いた場合でも受取時期に関わらず、満期日支払い期日の属する年に一時所得して課税されます。
ただし、据え置きによる利息受取額はその年の雑所得として課税対象となります。
したがって満期金を据え置いた場合は、その据置で生じた利息を受け取った時に雑所得としてみなされます。
雑所得の場合、サラリーマンの場合は20万円を超えると申告する必要がありますが、一般的に据置の利率は現在0.01%程度ですので、そこまで心配されなくても大丈夫でしょう。
ただし自営業者は利息受取額がいくらであっても、申告する必要があります。
学資保険の税金対策について詳しくはこちら⇓
まとめ
学資保険は大切な教育資金を貯めるものです。
保険契約の返戻率や解約返戻金の額にこだわるだけでなく、受け取り後に利用できる控除はきっちり利用しましょう。
個人事業主の方は事業の経費として計上することはできませんが、控除という形で少しでも節税ができるので、必ず押さえておきたいですね。
確定申告や年末調整の手続きは少し複雑ですが、保険料の金額さえ把握できていれば簡単ですよ!
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